犬に認められる整形外科疾患
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、膝関節の直上にある膝蓋骨(膝のお皿)が内側や外側に脱臼することで、歩き方の異常や、痛みや炎症を引き起こす病気です。
膝蓋骨脱臼がある場合でも、痛みがほとんどなく症状が認められない場合があります。
また痛みが軽度で脱臼が軽度の場合には歩いているうちに、症状がなくなることがあります。
触診やレントゲン検査で診断ができる場合が多いため、心配な方はご相談ください。
治療
治療は、年齢、体重、脱臼グレード、活動性、飼育目的によって様々です。
疼痛管理や関節炎緩和を目的とした内科治療、滑車溝造溝術や脛骨粗面転移術など外科治療があります。
必ずしも治療が必要というわけではありませんが、治療の必要性があるかなども含めて、一度ご相談下さい。
前十字靭帯断裂
前十字靱帯とは、膝関節を構成する靭帯の一つで、脛骨の前方への突出、内側への回転を抑制しています。
前十字靭帯断裂とは、この靭帯が切れてしまう疾患です。
前十字靱帯断裂は、犬では一般的な整形外科疾患の一つであり、膝関節の不安定性により痛み・関節炎・関節液の貯留を生じることがあります。
加齢性および変性性変化が生じた結果、わずかな外力のみでも生じてしまうことが多いと言われています。
治療
前十字靱帯断裂の治療の目的は、痛みからの解放・後ろ足の機能の改善・関節炎の進行を抑えることです。
これらを達成するために、様々な治療方法の中から動物の状態(犬種、年齢、体重、活動性など)に適した治療法(鎮痛剤による内科治療、関節外方・TPLOなどの外科手術)を選択します。
当院では、最適な治療法がどれか、飼い主様と一緒にご相談していきます。
多発性関節炎
自己免疫(細菌やウイルスなどの外敵から体を守る仕組み)によって自身の細胞が攻撃されてしまう疾患です。
関節リウマチは人において歩行困難を引き起こすほど痛みが強く出る関節炎ですが、犬も同様な関節炎が認められます。
自己免疫反応により、関節内に炎症が生じ、関節の軟骨表面や構造物が破壊され、関節炎や関節の変形がおこるため、動物は著しい痛みや倦怠感が生じます。
身体検査やレントゲン検査、関節液の検査などで診断を行います。
治療
免疫抑制剤と呼ばれる内服薬による治療が主となります。
治療反応によっては複数の免疫抑制剤の服用や長期的な薬の服用が必要な場合もあります。
その結果、薬の副作用が出る場合もありますので、十分にご理解いただいた上で治療を実施する必要があります。
変形性関節症
高齢の犬や猫で多く認められる疾患です。加齢や体重の負荷、関節の脱臼や靭帯の断裂など他の疾患に伴い引き起こされます。
これらの原因により、軟骨が変形し破壊され、クッションとしての機能が低下してしまい、骨が擦れ合うことにより炎症が引き起こされ、痛みに繋がります。
治療
基本的には、鎮痛剤の投与などの内科的な治療が選択されます。
軟骨成分を補うとされているサプリメントを併用することもあります。
肥満の場合は、体重管理をすることも大切な治療法の1つとなります。
椎間板ヘルニア
頸部・腰背部の椎間と呼ばれる背骨の骨と骨の間にあるクッションが何かしらの影響により突出してしまい、それが神経を圧迫することにより強い痛みや麻痺の症状を引き起こす疾患です。
重度なものでは、排尿・排便困難を引き起こします。前兆がなく突然発症する場合もあります。
診断にはMRI撮影が必要ですが、その他の疾患が起因していないかしっかり血液やレントゲン検査などを行った上で、判断いたします
治療
症状が軽度なものは鎮痛剤・消炎剤による内科治療が主体となります。
後肢麻痺や排尿困難などの症状が認められる場合は、神経を圧迫している椎間板物質を取り除くといった外科治療を早急に実施する必要があります。