Obstetric

産科診療

犬や猫は安産だと昔から言われていますが、実際は交配から分娩まで様々な問題が起こり得ます。
出産は難産になるかどうか、その時にならなければわからないことがほとんどです。
犬の妊娠期間は63日が一般的ですが、個々によって変わってきます。
交配して1ヶ月ほどでエコーにて診断が可能になりますので、注意点・頭数確認・出産準備・帝王切開・出産後についてなどご相談いただき、十分な備えをすることが重要です。
当院では、元気な赤ちゃんが生まれるよう可能な限りサポートさせていただきます。
妊娠~出産後までのケアをアドバイスし、安全なお産になるように取り組んでいますので、ペットの妊娠、出産を希望される方はまずご相談ください。

当院の産科診療

問診、身体検査

交配した時期や体調の変化について確認します。
身体検査では、乳腺の腫れや陰部からの分泌物の有無、体重の増加を確認します。また、出産直前には直腸温が低下しますので、自宅で体温を測定できるようお教えいたします。

交配適期の診断

小型犬の発情周期は多くの場合、6ヶ月周期です。
発情周期は、発情前期、発情期(排卵期)、発情後期(妊娠期)、無発情期に分けられます。
当院での交配適宜の診断は、膣スメア検査、視診、触診、♂に対する許容性を評価して行います。

妊娠鑑定と出産前の評価

犬の妊娠期間は前述の通り63日前後です。
交配後3-4週間以降にエコー検査を行い、胎のうの有無を調べて妊娠鑑定をします。交配後55日前後にX線検査を行い、胎児の頭数、胎向、骨盤腔の大きさなどを評価します。

出産について

出産前の徴候について

出産が近づくと、母犬は様々な徴候を示します。

  • 出産数日前から巣作り行動、落ち着きがなくなる
  • 出産直前の12-24時間前から 食欲低下、直腸温の低下
  • 出産直前 透明から濃緑色の分泌物

産道内で尿膜が破れると透明の液体が陰部から出てきます。
特に濃緑色の分泌物は胎盤剥離の状態のため注意が必要です

出産前の準備

  • 妊娠55日前後でのX線検査:産道が十分か確認します
  • 母犬が安心して分娩できるような清潔なお産箱
  • タオル、ハサミ、糸、保温箱なども念の為準備しておきましょう
  • かかりつけの獣医師との連絡:夜間の救急対応も想定
  • 予定日数日前から体温測定

出産について

出産は全部で通常6-12時間程度続き、間隔は20-12分程度です。
胎児が娩出後は胎盤が出てきます。

出生後の対応について

基本的には母犬が全て行うため、見守っているのが一番ですが、母犬が産まれた後の処置をしない場合は、飼い主様が下記の処置を行ってください。

  • 胎児は羊膜に包まれているため、剥がした後、清潔なタオルで体を拭きます。
  • 身体が冷えないよう湯たんぽなどでしっかり温めてください。
  • 羊水を体内から出すため、頭と体をしっかり抑えて軽く振り遠心力で羊水を排出します。
  • 臍帯は胎児側から1㎝程度離して結紮・離断します。
  • 胎盤は母犬が食べる場合がありますが、下痢の原因になりうるため廃棄します。
  • 出生後6時間以内に初乳を飲まし、免疫(移行抗体)を獲得させます。
  • 母犬が興奮状態にある場合は、誤って子犬を傷つけないよう注意が必要です。

難産に対する帝王切開

下記のような難産の場合は、緊急で帝王切開を行う必要があります。

  • 第一破水後、もしくは緑色の分泌液があるが、胎児が産まれない
    →基本的には何かしらの液体が出てきた場合は、胎児も一緒に出てくるはずです。
  • 陣痛の徴候はあるが、胎児が産まれない
  • 2時間以上間隔が空いて、胎児が産まれない
  • 一度低下した体温が平温に戻り、お産の徴候が見られない…など

当院では、低侵襲かつ迅速に複数回のお産ができるよう丁寧な帝王切開を心掛けています。

  • 迅速に胎児を取り出すことで、スリーピングベビーを予防する
  • 生理食塩水による腹腔内洗浄を丁寧に行い、術後の癒着を減らす
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