当院はキャットフレンドリークリニックです
キャットフレンドリークリニックとは

キャットフレンドリークリニック(CFC)は、猫にやさしい動物病院としてISFM(国際猫学会)によって確立された国際基準です。
CFC認定を受けた病院は、猫のために特別な環境を整え、専門知識を持ったスタッフが猫に優しいケアを提供しています。
当院では、入院室も猫専用のお部屋を設けており、天井が高く、猫棚を設置して運動ができる環境を作っています。
待合室にはブランケットも用意しており、ゲージにかけるなどしてご利用いただくことで、猫ちゃんの不安を軽減できるよう配慮しています。
また、当院では「フェリウェイ」という猫のフェロモン製剤を使用しています。
フェリウェイは、猫が安心できる匂い成分を模した製剤で、猫ちゃんがリラックスできる環境を作り出します。
これは、猫が本能的に感じ取るフェロモンを再現することで、猫同士が行うコミュニケーションのように、猫に安心感を与える効果があります。
よりリラックスした状態で診察を受けてもらうことで安定した検査結果が得られ、継続的な通院が必要な猫ちゃんの負担を少しでも和らげることができます。
猫ちゃんと飼い主様にとって、安心して通える病院をスタッフ一同目指しております。
当院の猫の診療で心がけていること

猫の診療で心掛けていることは、猫ちゃんにできるだけ負担をかけないことです。猫ちゃんは家を出るだけでストレスを感じやすく、知らない音や匂いにも敏感になります。
そのため、当院では猫専用の待合室を設け、フェリウェイを使用して少しでもリラックスできる環境を整えています。
診察時も急に触れたりせず、飼い主様のお話を伺いながら猫ちゃんの様子を見て、恐怖を感じさせないよう心掛けています。
必要な検査はできる限り飼い主様と一緒に行い、猫ちゃんが安心できるよう配慮しています。
また、診察や検査に時間をかけすぎないよう努め、猫ちゃんの不安を最小限に抑えるようにしています。
短時間で効率的に診察し、必要に応じて迅速に対応することで、猫ちゃんと飼い主様の負担を少しでも和らげるよう心掛けています
猫の代表的な疾患
腎不全

腎不全は、特に高齢の猫に多く見られる病気で、腎臓の機能が低下し、老廃物の排出や水分バランスの調整ができなくなる状態です。
進行すると死亡率が高く、深刻な問題を引き起こします。
初期には多飲多尿(水を多く飲み、尿量が増える)などの症状が見られ、進行すると食欲不振、体重減少、嘔吐、けいれん発作など全身に影響が現れます。
当院では、腎不全の進行について、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の基準に基づき、血液検査、尿検査、血圧測定を行いステージを分類し、治療方針を決定します。
腎臓の機能は回復しないため、治療の目的は腎臓への負担を軽減し、進行を遅らせることです。
治療法としては、点滴や水分補給で脱水を予防し、腎臓に負担をかけない療法食、サプリメント、薬物療法を併用して症状の緩和と全身管理を行います。
定期的な検査を通じて、病状を把握しながら猫の生活の質を維持していくことが重要です。
甲状腺機能亢進症

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺が肥大し、過剰な甲状腺ホルモンが分泌されることで起こる病気です。
特に10歳以上の高齢猫に多く見られ、ホルモン異常の中では最も一般的です。甲状腺ホルモンは代謝を活発にする作用があり、過剰分泌によって体の組織が過度に活性化し、さまざまな症状を引き起こします。
主な症状には、食欲の増加、体重減少、活動性の増加、多飲多尿、脱毛、頻脈、心肥大などがあり、性格が荒くなる、落ち着きがなくなるといった行動の変化も見られます。
診断は、血液検査で甲状腺ホルモン(T4)の濃度を測定し、T4値が高ければ確定されます。治療には、内服薬や食事療法でホルモンの分泌を抑える方法や、外科手術で甲状腺を摘出する方法があります。
また、甲状腺機能亢進症の猫では、心疾患や腎不全を併発していることが多いため、全身の臓器の状態を総合的に診察することが重要です。
甲状腺機能亢進症は早期発見が鍵であり、10歳以上の猫では定期的な健康診断が推奨されます。
糖尿病
猫の糖尿病は、インスリンの分泌や作用が不十分になることで発症します。
主な症状には、多飲多尿(水をよく飲み、尿量が増える)や食欲の増加があります。
病気が進行すると、体重が減少し、さらに特徴的な症状としてかかとを地面につけて歩く姿勢が見られることがあります。
これは、糖尿病性末梢神経障害によるもので、重度の高血糖が続くと末梢神経に障害が生じ、足の筋力が低下して脚腰が弱った歩き方になるのが原因です。
この症状は、血糖値が安定すれば元に戻ることが多いです。
糖尿病の診断は、血液検査と尿検査によって行われ、空腹時の血糖値が高く、尿に糖が検出されると糖尿病が疑われます。
さらに、尿にケトンが含まれている場合は、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な状態で、入院での緊急治療が必要です。
治療は主に、毎日のインスリン注射が必要で、血糖値を安定させるための継続的な管理が必要です。また、適切な食事も不可欠で、高食物繊維・高タンパク・低炭水化物の食事を与え、血糖値の急上昇を防ぎます。糖尿病は早期発見と適切な治療で、猫の生活の質を大きく向上させることができます。
炎症性腸疾患(IBD)
猫の食欲不振、嘔吐、下痢といった消化器症状は、一時的な場合もありますが、長期にわたる場合は寄生虫、感染症、腫瘍、食物アレルギーなどが原因として考えられ、それぞれの原因に応じた治療が必要です。
特に多いのが炎症性腸疾患(IBD)で、原因不明の炎症が胃、小腸、大腸に生じ、慢性的な嘔吐や下痢を繰り返します。
IBDには、リンパ球性形質細胞性腸炎(免疫の異常による炎症)、好酸球性腸炎(アレルギーや寄生虫感染による炎症)、肉芽腫性腸炎(慢性炎症で細胞の塊が形成される)があります。
これらの病態は、消化器型リンパ腫と非常に似ており、診断には内視鏡検査や生検が必要です。場合によっては、免疫組織化学染色や遺伝子解析などの特殊な検査が行われることもあります。
治療には、ステロイド剤や免疫抑制剤を使って炎症や免疫反応を抑えます。
薬の副作用が出ないよう、定期的に検査を行いながら薬の量を調整します。
さらに、療法食やプロバイオティクスを用いて腸内環境を整え、それぞれの原因に合わせた治療を進めていきます。
リンパ腫

リンパ腫は、リンパ球という白血球の一種ががん化する病気で、猫に多く見られる血液のがんです。発生部位により、消化器型、縦隔型、鼻腔型、腎臓型、中枢神経型などのタイプがあります。
消化器型リンパ腫では下痢や嘔吐などの消化器症状、縦隔型リンパ腫では胸水の貯留や呼吸困難が見られます。
鼻腔型では鼻血やくしゃみ、腎臓型では腎不全の症状、中枢神経型ではけいれんや歩行異常など、神経症状が現れることがあります。
治療には主に化学療法(抗がん剤治療)が用いられ、約60%の症例で効果が期待できると言われています。
治療を行った場合の平均余命は6~9カ月程度で、1年を超える生存率は約20%とされています。
抗がん剤治療には嘔吐、下痢、免疫力低下などの副作用が伴うことがありますが、これらの副作用には個体差があり、症状に応じた対応を行いながら治療を進めることが推奨されています。
リンパ腫の種類や進行具合に応じて、外科療法や放射線療法が選択することもあります。
難治性口内炎

猫の難治性口内炎は、口の中の粘膜に炎症が起こり、痛みや出血を伴う病気です。
猫の食欲が落ちたり、体重が減少したりすることがよく見られます。
原因は明確に解明されていませんが、ウイルスや細菌、免疫の過剰反応が関与していると考えられています。
症状としては、口臭、よだれ、食事中に痛みを感じて食事を避ける、体重の減少などが現れます。
治療法としては、抗生物質やステロイド剤、消炎鎮痛剤、免疫抑制剤、インターフェロン製剤などが用いられます。
これらの薬は症状を一時的に緩和することがありますが、完治が難しい場合も多いです。
また、歯周病が原因の場合、歯石を除去して口腔内の衛生状態を改善する治療も重要です。重度のケースでは、臼歯や全顎の抜歯が有効な治療法とされています。
歯石除去や抜歯は全身麻酔下で行われることが多く、猫の体力や健康状態を考慮して行います。
さらに、食事の工夫や水分補給も重要です。食事がしにくい場合には、嗜好性が高く食べやすいフードを選び、脱水症状がある場合には点滴などでのサポートが必要です。
FIP(猫伝染性腹膜炎)
FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルスが突然変異を起こし、致命的な全身性疾患を引き起こす病気です。
特に1歳未満の子猫で発症しやすく、初期には食欲不振、元気消失、発熱、体重減少などの症状が見られます。
進行すると、腹水や胸水が溜まり、呼吸困難を引き起こす「ウェットタイプ」と、神経症状や眼の異常が見られる「ドライタイプ」に分かれます。
発症後は致死率が非常に高く、治療法も長年見つかっていませんでした。
しかし近年、人の新型コロナウイルス治療薬であるレムデシビルやモルヌピラビルが、FIPに対しても効果が期待できると注目されています。
これらの薬はウイルスの増殖を抑えるお薬で、FIP治療に有効とされています。
ただし、動物用医薬品としては承認されておらず、治療は手探りの部分も多いです。
今後も情報を更新しながら、FIPの猫ちゃんが来たときに備えていこうと思います。
ワクチン接種部位肉腫

注射部位肉腫(Injection-Site Sarcoma, ISS)は、ワクチンやその他の注射薬を接種した部位に発生することがある悪性腫瘍です。
かつては特に不活化ワクチン、特に猫白血病ウイルス(FeLV)ワクチンや狂犬病ワクチンに含まれるアジュバントが原因と考えられていました。
しかし、現在では様々な注射薬(抗生物質、ステロイドなど)でも発生することが報告されています。